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【企業研究】5分でわかる株式会社ヤクルト本社のビジネスモデル

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『乳酸菌飲料』といえばヤクルト。
ヤクルトスワローズの親会社としても有名です。Jリーグやプロバスケのチームスポンサーでもあり、スポーツへの出資も惜しまない企業です。
メーカーとしての正式名称は株式会社ヤクルト本社。乳酸菌飲料では最大手ですね。

ヤクルトはその安定した事業展開、研究成果から就活生や転職希望者、投資家からも人気のメーカー。この記事では企業研究として売上や事業展開をまとめていきます。

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はじめに|株式会社ヤクルト本社について

株式会社ヤクルト本社は『私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します』を企業理念に掲げる食品メーカー。”健康”があらゆる事業の軸になっています。

ヤクルトは乳酸菌飲料などの食品事業をメインに、医薬品や化粧品事業を展開しています。
食品事業には清涼飲料水や健康食品、栄養ドリンク、そして麺類も。多角的ですね。
メイン商品は何といっても乳酸菌飲料のヤクルト!
そしてジョアやソフール、他にもヨーグルトや野菜ジュース、豆乳なども販売しています。

ヤクルトのルーツは、1930年に代田博士が発見した乳酸菌シロタ株
発見から5年後には最初のヤクルトが発売され、その20年後に株式会社ヤクルトが設立されます。
化粧品や医薬品に進出したのは1960〜70年代のこと。医薬品も酵素製剤や整腸薬からのスタートでしたが、現在はオンコロジー(抗がん剤)が主力となっています。

乳酸菌をベースに医薬品も展開しているという点では明治ホールディングスが競合。明治は乳製品のトップメーカーです。
しかし、ヤクルトにも圧倒的な商品ブランド、途上国をいち早くカバーした海外展開、そしてヤクルトレディと、他社にはない強みがあります。

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株式会社ヤクルト本社のビジネスモデル

ヤクルトの売上、利益は国内、海外ともに安定しています。
以前は仏乳製品大手のダノンから買収されるのでは?という懸念もありましたが、2018年にヤクルトの株が売却され、ダノンの持ち株比率は20%から7%弱まで下がりました。
(筆頭株主は継続ですが)買収問題は落ち着いた様子。

ここではヤクルトのビジネスモデルを表す数字を掘り下げていきます。

ヤクルトの売上・利益は安定成長を続ける

ヤクルト本社の売り上げと利益推移

(参考:連結損益計算書|株式会社ヤクルト本社)

ヤクルトの売上、そして利益はほぼ毎年微増を続けており、2018年3月期では初めて売上4,000億を超えました。

近年は営業利益率も10%前後で推移しています。
薄利多売で利益を乗せにくい食品メーカーではトップクラス!
明治HD(7.6%-2018)、森永乳業(3.7%-同)と比べても高い数字です。
ヤクルトレディによる営業と宣伝のダブル効果で広告費、販促費を抑えられることもポイント。付加価値をしっかりブランディングできている証拠でもありますね。

利益の半分は海外事業|途上国での圧倒的ブランド力

ヤクルトの売上比率と利益比率

(参考:セグメント情報|株式会社ヤクルト本社 ※単位は百万円)

2018年3月期での売上と営業比率の割合です。売上だけ見ると日本国内の飲料事業が半数を占めていますが、営業利益では7割近くが海外飲料事業となっています。
なお、医薬品は減収減益が続いており、同年度の営業利益は前年の半減以下に。
ここ数年は営業利益ダウンが激しく、他の製薬メーカーと同様、薬価改定の影響を大きく受けています。

ヤクルトの海外売上比率

(参考:平成30年3月期決算短信|株式会社ヤクルト本社 ※単位は百万円)

海外の売上比率を見ると、アジア、オセアニアで30%近くを占めています。
経営計画を見ると、今後は中東、アメリカ、中国での拡販を目指していく様子。海外プラント設立にも積極的です。
途上国にマッチしていたヤクルトレディや健康への訴求が、アメリカや中国でどこまで広げていけるかがポイントですね。
逆にヨーロッパでは多数の競合メーカーがあり、地元密着型の営業スタイルも相性が良いとは言えず、苦戦が続くでしょう。優先順位も低くなっています。

海外展開とヤクルトレディ

ヤクルトの海外展開はアジア・オセアニアが主戦場。
衛生面が悪い環境では食べ物の汚染リスクも高く、胃腸を整える乳酸菌飲料、ヤクルトは重要な役割を担っています。

ヨーロッパではフランスを中心にラクタリスやダノン、そしてネスレといった乳業メーカーも多く、苦戦しています。世界、そして日本の乳業メーカーについては以下の記事をご覧ください。

【現在作成中(2019.7公開予定)】

ただ、これらのメーカーではヨーグルトは販売していても『乳酸菌飲料』というジャンルはマイナー。ライトに飲める乳酸菌飲料のマーケットは日本のヤクルト、カルピスが開拓したのです。

アジア・オセアニアでの成功は、

  • 途上国が多く胃腸改善の需要が高いこと
  • 1本が小さく安価で提供できる
  • ヤクルトレディによる販売網

が要因です。

着目すべきはヤクルトレディ!
近年は、ドローン輸送や、AIによるオーダー受注など、物流の無人化が進んでいますが、まだまだインターネットすら普及しきっていない途上国には対応できません。もちろんイオンのようなスーパーマーケットもありません。
そのような地域では、細かいエリアまで営業で回れるヤクルトレディが力を発揮するのです。

世界のヤクルトレディは2018年3月時点で約8万人!その半数を海外が占めています。
現地スタッフを営業として育て、ローカルエリアまで販売網を拡大する。戦後、日本にヤクルトを広めた歴史を世界の途上国で再現してるというわけですね。
メーカーにとっては途上国進出のロールモデルと言えるでしょう。

食品トップクラスの研究開発費

企業名売上(億円)研究費(億円)比率 %
JT21,4335822.7
キリンHD-201620,7516293.1
アサヒHD20,8491170.6
明治HD12,4852612.2
雪印メグミルク5,961390.7
森永乳業5,920540.9
ヤクルト3,9041273.2

(参考:各社決算短信または有価証券報告書)

研究開発費の対売上比率は食品メーカーではトップクラスです。
JT、キリン、明治、ヤクルトの研究費が目立ちますが、いずれも医薬品事業を含むことが挙げられます。

明治もヤクルトも、乳製品の中では機能性ヨーグルト、特保などに強いメーカーです。
ヤクルトの医薬品はオンコロジー(がん)中心ですが、ヒト試験や機能検証など、化粧品や食品にも応用できる研究環境が揃っています。
明治との差別化は、より『乳酸菌』という軸が強いところ。尖った戦略が強みです。

【企業研究】5分でわかる明治ホールディングス株式会社のビジネスモデル

もともと医薬品事業も乳酸菌の免疫活性機能を応用しようとしたところがスタート。
化粧品研究所でも乳酸菌の保湿や炎症抑制効果に着目しています。
これらの研究で成果が出れば、カゼイ・シロタ株を初めとした『ヤクルトの乳酸菌』のブランドもどんどん上がっていきます。
多くの企業が掲げるだけで実行できていない『事業間のシナジー』を体現していますね。

もともとヤクルトは人の健康を整える乳酸菌飲料がコンセプト。食品よりも医薬品に近いアプローチが必要な商品です。医薬品レベルの環境でバックデータを揃えられるヤクルトや明治が、機能性食品で他社より優位に立てるのは当たり前です。

みるおか
みるおか

徹底的に乳酸菌を軸に置いた研究環境は同じ研究職としてうらやましい限り…ヤクルトで働きたかった…(遠い目)

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おわりに

ヤクルトのビジネスモデルは経営学のテキストに登場されることもしばしば。ビジネスとしては野球チーム運営も忘れてはいけませんね。とにかくユニークで尖った戦略が目立ちます。

  • ヤクルトという圧倒的ブランド
  • ヤクルトレディによるユニークな販売網と優れた海外戦略
  • 恵まれた研究環境と医薬品、化粧品とのシナジー
  • 機能性食品としての豊富なバックデータ

これらの武器は、コスト、広告販売、ブランディング面で圧倒的アドバンテージですね。

消費者にとっては機能的で信頼できるヤクルト。
就職希望者にとっては、安定しつつユニークでスケールの大きいキャリアも送れる企業。
私が一番信頼している食品メーカーの1つです。