毎年7月20〜24日に、青森県の恐山では夏の大祭典(例大祭)が開催されています。
恐山大祭典の基本情報に関しては下の記事に書いているので、そちらをご参照ください。
今年は上手いこと休日が取れたので、恐山の大祭を観光しつつ、宿坊(仏教寺院の宿泊施設)に宿泊してきました。
霊場恐山の景色に加え、イタコの口寄せなど貴重な経験ができました。
日本最恐の心霊スポットとも言われますが、果たして…
今日の記事では、本州北の果て、青森県恐山の大祭典を写真とともにレポートしていきます。
恐山の基礎知識
基本情報
以下、霊場恐山パンフレットより抜粋
【寺名】恐山菩提寺
【本尊】延命地蔵菩薩
【開基】慈覚大師円仁
【本坊】曹洞宗円通寺
【開山期間】毎年5月1日〜10月末日
【開門時間】6:00〜18:00(大祭典、秋詣り期間は別枠)
【大祭典】7月20日〜24日
【秋詣り】10月の体育の日が最終日となる3日間(土・日・月)
【入山料】500円(個人)、200円(小中学生)、400円(団体20名〜)
【祈祷、供養時間】6:30〜、11:00〜、14:00〜(大祭典・秋詣り期間は別設)
観光の注意点
入山受付所で確認したところ、写真撮影は寺院の中以外はどこでも可能とのことでした。恐山境内の建物の内部がわかる写真はNGとのことです。建造物の外観や地蔵、風景等は全て撮影可です。宿坊内も撮影可能でしたが、写真撮影不可の区画があるので、曖昧な時は周囲のお坊さんや関係者に質問しましょう。
イタコの口寄せの料金は4000円でしたが、かなり曖昧です。僕の前の人は5000円支払っていたような…
5000円や3000円と書いてあるブログもあり、10分で3000円だったというレポートもあるので、ざっくり時間で料金を決めているのかもしれませんね。僕の時は10分ちょっとでした。
今回は小雨で平日、かつ午前中ということもあり、2人待ちでイタコさんに会えましたが、休日や午後、天候の良い日は1時間以上待つこともあるようです。
恐山へのアクセスと総門付近の風景
地図からわかるに、本州の北の果てです。八戸から車で約1時間半(渋滞なし)でした。1本道かつ1車線なので、休日は混雑が予想されます。
また、恐山まで7kmの時点から山道になり、3kmを切った時点から急カーブの連続です。事故も多発している場所ですので、運転には注意しましょう。恐山で交通事故とか洒落にならない…
山道を超えると、急に道が開けて大きな湖(宇曽利山湖)が見えてきます。
非常に水が澄んだ湖ですが、車から降りると強烈な硫黄の匂いがします。
恐山一帯は温泉が多く、至る所から硫化水素ガスが発生しています。
一帯には析出した硫黄成分が点在しています。非常に澄んだ湖とのコントラストが印象的でした。
このような環境でも生態系は豊かで、柵には多くのヤゴの抜け殻とイトトンボが止まっていました。目視で魚は観察できませんでしたが、周囲は豊かな湿地帯となっており、鵜や鴨なども観察できました。
駐車場の奥には案内所と総門があります。この横には休憩所や食事処もありました。駐車場のキャパシティは約300台とのことです。大祭初日の10時に着いて、占有率は3割程度でした。
恐山で食レポ
境内の写真は最後にまとめています!風景写真の前に恐山の食事をレポートしていきます。
霊場アイス(マジでクソ不味い)
受付横と食事処の横にある霊場アイス!
合掌
の文字が印象的です。
頭だけ見えていますが、売っているのは70〜80台とみられるおばあちゃん!
『何がおすすめですか?^^』
と聞くと、
『みーんなおすすめだよ…』
と優しく答えてくれました。ヨモギ、ブルーべリー、バニラ(ミルク?)とあり、みんなおすすめとのことなので三色アイスを頼みました。
で、このアイスが
マジでクソ不味い
アイスクリームというより、氷の小さい結晶をクリームで固めたような食感で、見た目とは裏腹にシャリシャリしてます。ただ、ジェラートのように組織がしっかりしているわけでもなく、粘り気のあるかき氷を食べているような感覚でした。
食感だけじゃなく味も不味いです。マズイというか味があまりしません。
ブルーベリーはほのかに香る程度、ヨモギは青臭いだけ、バニラに至ってはただの氷でした。
正直、『食べなきゃよかった』と思いましたが、意表をつく味なので、来場されたからは是非チャレンジしてください!
食事処『蓮華庵』
さて、アイスの完食に時間がかかり、食事処『蓮華庵』の周りをウロウロしていると、店員のおばちゃんが、
『捨てるかい?(マジキチスマイル)』
と声をかけてくれました。完食までもう少しですし、基本的に買ったものは残さないタイプなので断りましたが、
『あら、そう…すごいわね…』
やはりみんな食べきれないのか…
蓮華庵で頼んだのはカレーライス(700円)!
ボンカレーに似た味でとっても美味しかったです!
食後にあんみつ(600円)も頼みました!
やたら薄味でしたがそれなりに美味しかったです!
宿坊『吉祥閣』で宿泊
宿坊の宿泊料金は12000円/泊です。普段は空いていますが、大祭中は前日満室です。ツアーで大部屋に泊まることが多く、個人客のスペースは多くないので、大祭、秋詣りの時の予約は早めに済ませましょう。
宿坊の内観
宿坊スポットとしては高野山に並び日本トップクラス。宿坊というか、もはやただのホテルです。
ラウンジも非常に綺麗でした。
食事はこのような精進料理(というにはあまりに豪華)です。
食事の前にはこの文言を唱えます。
- 一つにはこうの多少を計り彼の来処を量る。
ー感謝の気持ち
- 二つには己れが徳行の全缺をもって供に慶ず。
ー反省の気持ち
- 三つには心を防ぎ過を離ること貧等を宗とす。
ー好き嫌いしないこと
- 四つには正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為めなり。
ー食事は命のために頂くということ
- 五つには成道の為めの故に今此の食を受く。
ー覚悟の気持ち
宿泊客全員で唱えてから一斉に頂きました。
法話:恐山と人の生について
19時からは和尚さんの法話がありました。ずっと恐山で説いている方です。
法話は1時間ですが、堅苦しい話ではなく、ギャグを交えながら引き込まれるストーリー展開でした。伝統のある寺院の和尚さんは法話が上手なんですよね。元々は百貨店に勤めていて、後に出家したとの事。俗世の話題も取り入れた高いトークスキルに驚きました。
- 恐山ではイタコや心霊関係の取材は全てお断りしている。恐山は信仰・祈祷の場所であって心霊スポットではない。
- 楽に死ぬには90以上まで生きる事(ぽっくり逝ける)、あるいは自分を大切にしないこと。他人のために生きることで自分に対するマイナスな感情が消える。しかし、他人への施しについて絶対に見返りを期待しないこと。 見返りを期待することは自分のために行うということ。『要は長生きしろ』。
- 死者は生きている人間が作る。死んでしまった人間に対して、新しい関係を構築する起点が『葬式』であり、残された人間それぞれの感情が『死者』を作る。
このような話が印象的でした。
僕は信仰深くない人間ですが、これ以外にも非常に興味深い話も多く、宿坊に宿泊する方は是非参加してください。新しい価値観が得られるはずです。
恐山の風景写真ギャラリー
最後に、境内の写真を紹介していきます。以下がパンフレットに記載の参拝順路です。この参拝順路に沿って歩いて行きました。
境外
恐山から3km手前の地点にはバス停があり、冷水が流れています。不老の水とも呼ばれています。ここにはお地蔵様が集まっていましたが、参道には一定距離毎にお地蔵さんが1体ずつ並んでいます。不思議と怖さはありませんでした。
駐車場から少し道を戻ると三途川が現れます。名前の印象とは裏腹に非常に澄んだ水流が印象的でした。
橋の上からの景色です。柵の左側が現世、右側が”あの世”とされています。
総門〜本尊まで
六大地蔵
出迎えは六大地蔵です。このような風車は境内でも購入でき、至る所に刺さっていました。
イタコの口寄せ
このようなテントに近い小屋で死者を呼び寄せてもらいます。場所は年によって変わることがあるとのことです。
イタコが座っているのは1畳ほどのスペース。この日は3人のイタコがいました。イタコ人口も減っているようです。希望者は大勢いるのですが、”信仰深い”かつ”3年以上の住み込みでの修行”に耐えられる希望者はいないとのこと…
本尊周辺
大祭中は神輿が出ることもあるそうです。
ここから地蔵山方向にいる不動明王に会いつつ、賽の河原へを向かいます。
不動明王から賽の河原
不動明王
『クマ注意』と書かれた山道を少し登った所に不動明王が立っています。
山道の出口から見た周囲の景色は荘厳で穏やか、明るいからかもしれませんが心霊スポットの面影は感じませんでした。
賽の河原へ向かう道
道中は各所に石が積まれており、所々亜硫酸ガスが吹き出していました。下の写真は噴出口で、投げられた硬貨が全て黒くなっています。
噴出口は非常に熱く、亜硫酸ガスは直接匂いを嗅ぐと濃度によっては死ぬこともあるガスです。
手であおいで匂いを嗅いでいる夫婦が見えましたが、このような真似は絶対に止めましょう。
突然大きな音がなっている場所に着いたので見てみると、温泉が沸騰してボコボコ鳴っていました。こちらも熱湯注意です。
慈覚大師堂
賽の河原
賽の河原です。親より先に逝ってしまった子が集まり石を積み上げる場所。お供え物が点在しています。
非常に穏やかな場所でした。砂浜と向こう岸に見える緑豊かな森が対照的で美しかったです。
ハンミョウの仲間もいました。厳しい環境ですが、生態系も見られます。
展望台
展望台には五智如来が祀られています。 5つの知恵(法界体性智、大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智)を5体の如来にあてはめたものとされています。
ここからの風景も荘厳でした。
地獄
ここから参拝順路に点在する『地獄』を通って総門に戻ります。
胎内くぐり
表しているのは名前の通りです。
無間地獄
無間地獄は地獄の最下層と言われています。
塩屋地獄
血の池地獄
重罪地獄
どうや地獄
修羅王地獄
境内写真は以上です。
おわりに
明るいうちに参拝しましたが、怖さは感じず、むしろその景色に圧倒された1日でした。翌日の朝に帰りましたが、観光客と大勢すれ違いましたよ。
しかし、多くの人は信仰、祈祷のために来ています。観光客も歓迎されますが、マナーを守った上で参拝したいですね。
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