最終更新2017年1月3日
僕はプレゼンテーションがとにかく苦手です。滑舌も悪いからダブルパンチ…。
あがり症のため、人前で発表となるとどうしても慌ててしまいます。
大学院生時代は、研究発表の度に教授に怒られましたね。
今でこそ会社でプレゼンする機会も増えてきましたが、当時は就活や修論発表すら乗り越えられないと思ってました。
発表の度に憂鬱な気分です。
なぜなら僕は ”喋るのが下手” だから…。
しかし、院生時代のある日…教授が院生達に向かって怒号をあげてた時、僕に向かって…
『お前別に喋るの下手ちゃうねんから、もっとストーリーちゃんと考えーや!!』
驚きました。
怒られたことより、教授が『喋るのが下手ではない』と僕を評価していたことに対してです。
むしろ原稿とか発表資料の方に自信はあったのですが…
研究背景も書いてるし、目的も書いてるし、結果も書いてるし、考察もそんなズレていない…。何が悪いのか当時は全く思い浮かびませんでした。
今日の記事では、僕が”上手な研究発表”について叱られた時の思い出を振り返りながら、研究発表に必要なエッセンスについて解説していきます。
ストーリーは『三角形の法則』で組み立てる!
”背景”や”概要”は『逆三角形』:一般論から、コアな研究内容へ…
研究発表について最初に叩き込まれたのがこの話。
『逆三角形』でのストーリー構成について解説していきます。
研究発表に関わらず、プレゼンや論文では、”背景”とか”目的”を最初に話すことが多いですよね。
背景は『なぜこの研究をしているのか』
目的は『このプレゼンでは何を伝えるつもりなのか』
といった感じでしょうか。
研究発表では、結果だけではなく研究全体のストーリーも魅力的に見せる必要があります。
まずは”背景”や”概要”の構成要素を挙げながら解説していきましょう。
1.先行研究、研究の目的
- なぜ、このテーマで論文を書くのか?
- その分野にはどんな先行論文、情報があるのか?
- その分野で解明されてない部分、課題は何か?
2.自分の研究の範囲
- 自分のテーマは、その分野の何を研究するのか?
- その研究で、どんな情報が手に入るのか?
- その情報により、どんなメリットが得られるのか?
3.自分の研究結果、考察
- どんなプロセスで、何の研究をしたのか?
- その研究結果は、担当分野に有益な情報を示したのか?
- その研究結果から、どんな応用展開が期待できるか?
こんなところでしょう。
1~3に沿って、ストーリーの中心が全体から個人へ収束しています。
1.では研究分野の話、研究者全体が主人公です。言ってしまえば世界全体のお話ですね。
2.は自分の研究分野の話。ここでは個人、あるいは限られた研究分野に携わるグループが主人公です。
3.でやっと個人が主人公になりましたね。ここでやっと自分の話ができます。
ここでは、1~3それぞれのストーリーにおける、主人公の範囲の広さを『幅』と表現したいと思います。
その『幅』に注意しながら説明しましょう、というのが今回のトピックです。
例えば、研究発表の場合、最初は、
『私の研究テーマは●●の解明です。』
のような話から始まると思います。
その次のストーリーを書いてみると…
【例A】
『このテーマでは◇◇◇を明らかにすることを目的にしています。』
『なぜなら▲▲▲という研究分野の中で、×××という課題があるからです。』
『そのため、当研究では◆◆◆というプロセスで、△△△を解明しました。』
一見、何の問題もないように見えます。
私も院生になったばかりの頃は、こんな流れで説明していました。
しかし、このストーリー展開が教授の逆鱗に触れたのです。
修正して書き直すと、
【例B】
『現在、▲▲▲という研究分野の中で、×××という課題があります。』
『なので、この研究テーマでは◇◇◇を明らかにすることを目的にしました。』
『そのため、当研究では◆◆◆というプロセスで、△△△を解明しました。』
【例A】と【例B】を比較すると、1行目と2行目が入れ替わっています。
【例A】ではストーリーの『幅』が、最初狭くて、一旦広くなってから、また狭くなる、というパターンです。
もう1度見ると…
【例A】
『このテーマでは◇◇◇を明らかにすることを目的にしています。』
ここでは研究グループ単位での話ですね。
『なぜなら▲▲▲という研究分野の中で、×××という課題があるからです。』
そこから、研究分野全体、世界の話に飛びます。
『そのため、当研究では◆◆◆というプロセスで、△△△を解明しました。』
その後に個人の話につなげています。
このような構成では、研究グループの話をして、そこから世界の話に広がった後、個人の話まで一気に幅が狭まります。
”研究背景”や”研究概要”のような大きなストーリーを話している場合、主人公の範囲=幅が広くなったり狭くなったりを繰り返すと、聴講者が混乱してしまいます。
対して、【例B】の構成だと、ストーリーの幅が徐々に狭まっていくので、話の流れを追っていくだけで、自然についていきやすいのです。
研究発表では、必ずしも自分の研究テーマに精通している人が聴講者ではありません。
そのため、”なるべく脳に複雑な情報を処理させないストーリー構成”が求められるのです。
ストーリーの幅、抽象度を変動させず、徐々に小さくしていくと、伝わりやすくなります。
これを図示してみましょう。
こんな感じ。
ストーリーの幅を狭めていくのが、まるで『逆三角形』というわけですね。
最初は抽象的に、徐々に詳細に説明していく、という流れです。
”結果”や”考察”は普通の『三角形』:結果を先出しして、応用展開へ…
さて、”背景”や”概要”では『逆三角形』の構成がやりやすいという話をしました。
その後は、いよいよ研究結果の報告です。
この、”結果”や”考察”のプレゼンでは、またちょっと方法を変えた方が良いかもしれません。
大学院生にとって…
というより、プレゼンする人間にとって絶対言われたくないのが、
『つまり何が言いたいわけ?』
という言葉だと思います。
この言葉がトラウマになっている人も多いのではないでしょうか。
僕も教授にひたすら怒られていました…(白目)
前の項で示したように、”背景”や”概要”のプレゼンではストーリー性が重要でした。
しかし、結果報告では何が大事か。
”結果”ですよね。
”結果”を最初に言ってやりましょう。
『それで、何が言いたいわけ?』のアンサーを一番最初に伝えてしまうのです。
聴講者の”先入観”をコントロールしてしまいましょう。
『当研究では、◇◇の実験で▲▲を明らかにしました。』
最初に結論を宣言しておくことで、その後、研究のプロセスや、細かい実験条件を説明するときも、この”結果”が聴講者の頭に常に残ります。
『(これは何のためにやってるんだろう…)』という疑問が浮かばないんです。
ただし、研究結果の報告だけで終わってはいけません。
”研究”にとって重要な、
『それ、何か役に立つの?』
を説明しないと終われないですね。
発表の最後に、研究結果によって得られた”今後の展望”や”応用展開”を添えてあげれば、研究発表の終了です。
こう見ると、普通の『三角形』になりますよね。
最初に”結論”を堂々と言ってしまい、それに付随する情報を説明する。
そして、今後の展開を述べる。
徐々にストーリーの幅が広くなっています。
この『逆三角形』と『三角形』の使い分けが、伝わりやすい研究発表には重要なのです。
おわりに
- “背景”や”概要”といった、ストーリー性がある発表では、ストーリーの幅、抽象度を徐々に狭めていく『逆三角形』で展開する。
- ”結果”や”考察”では、 最初に結論を言った後に、付随する情報を伝える。その後、ストーリを広げていく『三角形』で展開する。
これが、今回のまとめです。
とはいえ、テクニックを使えば、”背景”や”概要”を『三角形』で説明することも出来るんですよ。
大事なのは、一連の流れの中で、ストーリーの幅が広くなったり狭くなったりしないことなのです。
テクニックといえば、魅力的なプレゼンをする人には、『あえてハズす』なんて技を使ったり、小笑いを入れたり…
色んな技を使う人がいます。
ですが、研究発表では、『自分の研究結果とその意義をわかりやすく伝える』というのが最優先事項です。
笑いやおしゃべりのテクニックは、それを満たしてから考えましょう。
サラリーマンの顧客へのプレゼンや、メディアへの新商品発表会といったプレゼンとは、テイストが異なります。
TPOをわきまえて、どんなスタイルのプレゼンが求められるのか、柔軟に対応しないといけません。
ちなみに、僕が新卒で就活したとき、技術系採用での研究発表は、全て『三角形』の構成で乗り切りましたよ。
特に”ハズす”こともせず、普通のプレゼンです。
大手企業を含め、研究発表は全部通りました。
あと、今回は、”研究発表”を例に話しましたが、この『三角形』の法則は、論文や、あるいはブログにも当てはまります。
ストーリー立てたオピニオンでは『逆三角形』で。
こんなこと言われてるよね。でも、あそこちょっとおかしいよね。だから僕こう考えたよ。
という流れ。
専門記事では『三角形』で。
こういうことを調べたよ!関連情報載せとくよ!将来はこうなるんじゃないかな?
みたいな。
話や文章の組み立て方…これからもずっと付き合っていきそうな課題です。
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